日本の尖閣国有化に反対する中国のデモ(c)AFP=時事
日本の尖閣国有化に反対する中国のデモ(c)AFP=時事

「櫛の取り合いをしている禿頭2人」と野次ったのはアルゼンチンの作家ボルヘスだ。ちょうど30年前にフォークランド島をめぐって戦争に至った英国とアルゼンチンを指してのことだが、誰も住まない尖閣諸島をめぐって日中が繰り広げるさや当ても、この禿頭2人に似ていなくもない。ただ、尖閣の意味は見かけよりはるかに大きい。海底油田、ガス田があるだけでない。周辺海域の支配は、米中のアジア戦略にもかかわるからだ。  9月6日付の英紙「インディペンデント」は、日本政府の尖閣買収決定とクリントン米国務長官の訪中を受け、この尖閣をめぐる紛糾を、南シナ海やインド洋まで広がる米中の戦略ゲームの中で分析した。中国が周辺海域へ支配を広げようとするのは「急激に増えつつあるエネルギー需要をまかなおうと必死なのが見え見えだ。他方でアメリカは、経済的に衰えても主義主張や戦略は変わらないところを見せようとしている」と同紙は見る。 【The islands that divide superpowers, The Independent, Sept. 6】

「困った日本」

 尖閣だけでない。終戦記念日を前にした韓国の李明博大統領の突然の竹島上陸と天皇への「暴言」。7月にはロシアのメドベージェフ首相の北方領土訪問もあり、北東アジアが急にきな臭くなってきた。欧米やアジアのメディアや識者らは、この事態をどんな眼差しでみているのだろうか。
 タイの英字紙「ネーション」は、尖閣・竹島をめぐる紛争は、日本がまだ戦後処理を終えていないことを示すとともに、「日本の凋落、新たなパワーセンターの出現、ナショナリズムの台頭」を反映していると見る香港在住のジャーナリスト、フランク・チンのコラムを載せた。【Old wounds open in East Asia, The Nation, Sept. 4】人口が減り、経済は停滞する中で東日本大震災、福島第1原発事故に見舞われた日本で、毎年のごとく変わる指導者が外交をうまくこなせるわけがない。アジア重視の姿勢をいったんは見せたが、結局は、相も変わらぬアメリカ頼り。ともに重要な同盟国である日韓が喧嘩しては、そのアメリカも大弱りだ。中国も、各地の反日デモを見せつけて「こっちも困っている」と日本に迫る。「天然資源争奪戦、中国と韓国で高まる一方のナショナリズムに解決策を見つけるには、日本に一貫性のある長期政権が出来ることが不可欠だ」とチンは言う。もともと米イェール大学グローバリズム研究センターのオンライン論壇に出たコラムだが、「困った日本」という視点がタイの気分を代弁したようだ。【East Asia’s Free for All, YaleGlobal, Aug. 30】

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