「カタルーニャ、欧州の新国家」を合言葉に行進する市民(c)AFP=時事
「カタルーニャ、欧州の新国家」を合言葉に行進する市民(c)AFP=時事

 国難に直面した時、一致団結して乗り切ろうとするのでなく、逆に内紛に陥って自分たちで足を引っ張り合う場合が少なくない。いやいや、我が国のことではない。財政危機に陥っているスペインで、東部カタルーニャ自治州の自治拡大を求める動きが強まり、独立にまで突き進むのでは、との懸念さえ生まれている。

“スペインのドイツ”カタルーニャ

「カタルーニャとスペインとの関係は、欧州の北部と南部との関係と、ある種似ている。北は南にうんざりしているんだ。カタルーニャも、スペインという国家にうんざりしているよ」
 カタルーニャ自治州のアルトゥル・マス首相は9月、自分たちとスペイン中央政府の関係について、マドリードで記者団にこう語った。どうやら彼は、国内でカタルーニャが置かれた状況を欧州連合(EU)内のドイツに、スペインをギリシャか何かに、重ね合わせているようだ。
 カタルーニャは、スペイン東部のバルセロナを中心とする国内最大の自治州である。産業革命の影響を早く受け、スペインの他の地域に先駆けて発展した。現在も、その経済力はスペイン全体の牽引役で、国内総生産(GDP)の5分の1を占める。
 その意味では、EU内のドイツにあたると、まあ言えないこともない。「なのに自分たちが苦労するのは、他の地域が足を引っ張るから」といった不満も以前から強かった。
 今回のユーロ危機とともに、この不満は増幅された。カタルーニャは、スペインの自治州として最も多い400億ユーロ(約4兆円)あまりの債務を抱えている。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は8月末、同自治州の信用格付けを2段階引き下げ、投機的格付けにあたる「BB」としたが、「こんな扱いを受けるのも、税金を中央政府に吸い上げられるから」との声が自治州内で強まった。
 6月に自治州内で実施された世論調査で、「住民投票が実施された場合には独立に賛成する」と答えた割合は51.1%に達した。前年に比べ8ポイント増で、賛成が半数を超えるのは初めてだ。カタルーニャのナショナルデー「ラ・ディアダ」にあたる9月11日には、地元警察当局発表で150万人に達する市民がバルセロナの街路を埋めた。参加者らは「カタルーニャ、欧州の新国家」を合言葉に、スペインからの分離独立を口々に叫びながら行進した。

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