オバマ再選――米共和党の深き悩み

執筆者:足立正彦2012年11月8日

 現職バラク・オバマ大統領とミット・ロムニー共和党大統領候補との対決に、遂に米国の有権者の審判が下された。今後4年間の米国の舵取りは、引き続きオバマ大統領に委ねられる。選挙キャンペーンの最終盤の各種世論調査では、「激戦州」でオバマ大統領がわずかに優位を維持していたものの、全米レベルでの世論調査では両候補ともほぼ互角の争いを展開していた。そのため米主要メディアの一部は、1800年大統領選挙以来212年ぶりに、両候補の獲得大統領選挙人数が同数の269名となる可能性を指摘するほどだった。
 ところが、現時点では接戦のために勝敗が未だ確定していないフロリダ以外の「激戦州」7州(オハイオ、ノースカロライナ、ヴァージニア、コロラド、アイオワ、ネヴァダ、ニューハンプシャー)については、ノースカロライナ以外の6州でオバマ大統領が勝利を収めた。オバマ大統領の獲得大統領選挙人数は303人に達し、300人台に乗せた(フロリダ州でこのままオバマ大統領の得票がロムニー候補を上回って勝利した場合、オバマ大統領の最終的な獲得大統領選挙人数は332人に達する)。

「激戦州」完全封じ込め

 他方、獲得大統領選挙人数が206人にとどまったロムニー候補は、こうした「激戦州」で軒並み敗北を重ねただけではない。選挙キャンペーンの最終盤でポール・ライアン副大統領候補とともに精力的に梃入れを図ったペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、ミネソタといった中西部諸州でも全敗を喫する結果となった。
 とりわけ、ウィスコンシン州はライアン副大統領候補の選出州である。2年前の2010年中間選挙でもティーパーティー(茶会党)旋風が吹き荒れ、連邦上院議員選挙や州知事選でも財政保守派の共和党候補が当選を果たした州だ。だが、ライアン下院議員を副大統領候補に指名したにもかかわらず、ロムニー候補は1984年大統領選挙でのロナルド・レーガン大統領以来28年振りとなる、ウィスコンシン州での共和党大統領候補としての勝利を収めることができなかった。
 さらに共和党にとって深刻なのは、ロッキー山脈・西部地域で選挙結果が注目されていたネヴァダ、コロラド、ニューメキシコのいずれの州でも勝利できなかったことである。民主党は2008年、全国党大会をコロラド州デンバーで開催するなど、近年、この地域での党勢拡大を積極的に図ってきた。
 前回コラム(「『253』対『206』:米大統領選まで残り1日」)の中で、民主党がロッキー山脈・西部地域でヒスパニック系やアフリカ系などのマイノリティ有権者、女性有権者、それに若年層を軸とする緩やかな連合を形成しつつある事実に触れた。対照的に、党内保守派が厳しい不法移民政策を鮮明にした結果、共和党はヒスパニック系有権者の支持を急速に失いつつある。
 かつて共和党の牙城であったロッキー山脈・西部地域で民主党が勝利するうえでこのような緩やかな連合の形成が有効であり、共和党に対して同地域で優位を確立しつつあることが今回の大統領選挙でも前回2008年に続いて改めて証明された。
 他方、民主党はオハイオなどの中西部工業州では労組・ブルーカラー層を軸とする民主党の伝統的な連合を形成した。筆者は、オハイオ州など「激戦州」におけるオバマ陣営の草の根の組織力の強靭さが、ロムニー候補の追撃を跳ね返すのではないかと考えていた。わずか2.4ポイントしか差がなかった両候補の一般投票の得票率を考慮すると、オバマ陣営が徹底した草の根選挙を展開したことで、ロムニー候補の「激戦州」での選挙キャンペーンの完全封じ込めに成功したことが判る。

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