米財政の赤字とアフリカの安全保障

執筆者:白戸圭一2012年11月30日

  米国では来年初めに減税措置の失効と歳出削減が重なる。増税による消費減と緊縮財政が一度に到来し、米国の景気が急激に冷え込むいわゆる「財政の崖」問題だ。これを避けるには、民主・共和両党が税制改革や支出カットで合意する必要がある。米国経済が後退局面に入れば、米国向け輸出の減少で世界経済全体が冷え込む。資源輸出の減少などを通じてサハラ以南アフリカの経済にも影響が及ぶかもしれない。

 米国の緊縮財政が世界に与える影響は経済分野にとどまらない。ここでは米国の国防費削減がアフリカの安全保障環境に与えるかもしれない影響について素描しておきたい。米国が唯一の超大国として全世界の安全保障に関与する政策を続けてきた以上、世界の全ての国は米国と友好関係にあるか敵対関係にあるかに関係なく、米国の国防態勢の変化と無縁ではいられないからである。

 米国の2012会計年度(2011年10月~2012年9月)の歳入は2兆4690億ドル、歳出は3兆7960億ドル、財政赤字は1兆3270億ドル(対GDP比8.5%)。2013会計年度(2012年10月~2013年9月)の歳入は2兆9020億ドル、歳出は3兆8030億ドル,財政赤字は9010億ドル(対GDP比5.5%)の見通しだ。

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