北朝鮮の宇宙空間技術委員会スポークスマンが12月1日に発表した談話は、「偉大な領導者、金正日(キム・ジョンイル)同志の遺訓を高く奉じ、わが国自身の力と技術で製作した実用ロケットを打ち上げることになった」とし、「われわれの科学者、技術者たちは4月の衛星発射で現れた欠点を分析し、ロケットの信頼性と精密度を改善するための事業を深め、衛星を発射する準備ができた」と強調した。
 前述したように12月17日が金正日総書記の死亡1年目の日であり、この時期に「人工衛星」(長距離弾道ミサイル)を打ち上げ、金正日総書記の遺訓を実現し、金正恩(キム・ジョンウン)後継体制の存在を内外に誇示するものとみられる。

様々な兆候

 朝鮮中央通信は11月22日に、北朝鮮代表が同15日の国連総会で「宇宙開発計画に基づいて引き続き実用衛星を打ち上げる」と演説したと報じ、近く、人工衛星を打ち上げることを示唆していた。
 米国の偵察衛星も、北朝鮮が11月に入り東倉里のミサイル発射場で長距離弾道ミサイルの発射準備とみられる動きを活発化させているとし、この情報を日韓両政府などに通告していた。ミサイル本体も既に搬入されたとみられ、発射場では、けん引車や燃料関連とみられる車両による作業などが行なわれ、ミサイルは平壌郊外の山陰洞にある兵器工場から列車で移送され、発射場の組み立て施設内にあるとみられていた。
 韓国国防省は偵察衛星の情報などから北朝鮮が12月から来年1月の間にミサイルを発射する可能性が高いとし、米商業衛星大手のデジタルグローブ社は11月26日時点で3週間以内の発射も可能との見方を示していた。
 さらに、米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は同29日、早ければ12月6日にも長距離弾道ミサイルの発射が可能な状態となると指摘した。
 北朝鮮は4月13日にこの発射場で人工衛星「光明星3号」を打ち上げたが、直後に空中爆発し、失敗に終わった。しかし、その後もエンジンの燃焼実験を実施するなどミサイル開発を継続していた。
 北朝鮮は4月の「光明星3号」の打ち上げは金正日総書記の「遺訓」であるとしてきた。「光明星3号」の打ち上げは北朝鮮が「強盛大国の大門を開く」ことの象徴的なイベントになるはずだったが、失敗に終わった。その意味で、金正日総書記の1周忌前後に人工衛星を打ち上げ、何が何でも金正日総書記の遺訓を実現しようということであろう。

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