2012年の中南米経済は、GDP比3.1%の成長にとどまった。昨年の4.3%と比べ1.2ポイント、年初の見通しと比べ0.6ポイントの減速である。EU危機と中国の経済減速の影響が、新興経済圏として堅調を誇ってきた中南米地域にじわり及んだ形である。12月11日国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)が速報値として発表した。同速報によれば、2013年は、世界経済が依然として不安要因を抱える中でも、3.8%に回復すると予測している。

 速報では、中南米経済がここ数年の世界経済の危機の中でも耐性力の強さを示した点を強調している。成長軌道を維持し、3年続けて失業率は低下し(6.4%)、実質賃金の上昇をもたらしている。外需が縮小する中でも輸出先の多様化により輸出額は伸び、また健全な財政運営(GDP比30%を切る政府債務比率)を背景にした財政発動による景気刺激策の実施や、貧困層・弱者を対象とした社会政策を通じた内需が成長を牽引していると分析している。外国直接投資(純)は1890億ドルの高水準を維持し、外貨準備高も7230億ドルを超す歴史的水準に積み上げるなど、堅調ぶりは依然続いている。

 パナマ(10.5%)、ペルー(6.2%)、チリ(5.5%)と自由貿易体制を堅持し投資を呼び込んでいる国が高い成長を維持した一方で、経済規模の大きなブラジル(1.2%)の減速が地域経済全体に影響を与えた。ブラジル経済の失速については、12月8日付の英誌『エコノミスト』が、「ブラジル経済:信頼の崩壊」という記事の中で、「市場への国家の介入度を高め、それがマクロ経済への信頼を損ねている」と強く批判し、「ルセフ大統領が再選を望むならマンテンガ財相を更迭すべきである」と内政干渉とも受け取れる指摘をしている。これに対し、ルセフ大統領は「彼らは、欧州や米国の方がはるかに悪いことが分からない」「外国のメディアの意見にわれわれの政策が影響されることはない」と珍しく気色ばむ発言をして話題を呼んだ。前述の速報では、このブラジルも来年は4%への回復を見込んでいるが、安定した為替・金利政策やブラジルコストの改善に向けた改革が必要となる。

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