米国東部コネティカット州の小学校で昨年12月14日、児童20人を含む26人が銃乱射の犠牲となる痛ましい事件が起きた。筆者が勤務する新聞社はニューヨーク駐在の記者2人が現場に駆けつけた。筆者はワシントンの支局で情報を集めながら、犠牲者の多くが子供だったことに打ちひしがれた米社会で、銃規制の強化を求める声が高まることを予想した。

 予想通り、オバマ大統領は事件を受け、バイデン副大統領を責任者とする政府間委員会を設置して包括的な銃犯罪対策を取りまとめ、2013年1月中に議会に提案する方針を明らかにした。

 今回の事件では半自動式小銃が使われたため、大統領は半自動式小銃など殺傷力の高い攻撃用銃器の規制を強化する意向を示している。米国では1994年、攻撃用銃器の製造・販売・所持などを禁止する攻撃用銃器規制法が10年間の時限立法で成立した。銃の生産・販売業者らで組織する全米ライフル協会(NRA)のロビー活動の結果、同法は延長されることなく2004年に失効したが、オバマ政権は同法を下敷きに新たな規制法の成立を目指すとみられる。

 多数の子供が学校内で無差別に殺害された以上、政権として何も手を打たないのは世論が許さない、という政治的な事情があるだろう。他方、周知の通り、米国には独立戦争以来の市民武装の伝統があり、合衆国憲法修正第2条には武器を保持する国民の権利が規定されている。加えてNRAは、銃規制に反対する最強の圧力団体である。多額の政治献金で歴代の米政権、米議会を動かし、銃規制を骨抜きにし続けてきた。こうした状況下で、政権としてとりあえず規制強化を図ろうと思えば、着手できそうな規制から着手する以外にない。攻撃用銃器の規制強化の案は、そうした事情から捻り出されたと推察する。

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