「対日包囲」の先頭に立つメルケル独首相

執筆者:佐藤伸行2013年1月27日

 日独関係と言うと、戦前・戦中の枢軸構築の記憶も手伝い、今も友好的な雰囲気が続いているかのような漠とした印象があるかもしれないが、所詮、国際社会とは国家と民族が自らの利得を求めて渡り合う、生き馬の目を抜く世界にほかならない。

 欧州危機に一服感が漂う中、メルケル・ドイツ首相は「アベノミクス」の柱である金融緩和策に非を鳴らし、これに歯止めを掛ける「対日包囲」の先頭に立つ決意を明らかにした。ドイツ指導部は、安倍政権・日銀の大規模な金融緩和による円安誘導を「為替操作」と断じ、切り下げ競争という名の「世界通貨戦争」を誘発するとの懸念を表明。2月半ばにモスクワで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、「日本問題」を重要議題として取り上げる構えだ。日本は金融政策を巡り、欧州勢を率いるドイツとぶつからざるを得ない雲行きになってきた。

 世界の政財界指導者が一堂に会するダボス会議でメルケルが発した対日批判は歯に衣着せず、大国の指導者としては異例の言葉遣いだった。

 演説の後、質疑に応じたメルケルは、為替操作について聞かれ、「日本を見た場合、懸念がないわけではない」と明言した。 「中央銀行は政治の間違った決断の尻拭いをする清掃人ではないし、経済競争力の欠落を埋め合わせるような存在でもない」と述べ、これまでの政治的失策のツケを日銀に支払わせるのは間違いだという立場を鮮明にした。

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