ロシアのプーチン大統領が執務するクレムリンの真横にあり、赤の広場を見下ろす位置にある欧州最大規模のホテル「ロシア」が、急遽取り壊されることになった。 二千七百室の「ロシア」は、日本や欧米の観光客の定宿で、旧ソ連末期の民営化の結果、モスクワ市が半分を所有、半分はチェチェン系のホテル会社に払い下げられ、経営も順調だった。 ところが、モスクワ市のルシコフ市長が最近、「景観を損なう」との理由で突然、取り壊しを宣言した。入居店舗にも寝耳に水の発表だったが、隣のホテルからチェチェン系企業を追い払うために、プーチン大統領が後ろで糸を引いているとの見方が強まっている。 ホテルの屋上や高層階からはクレムリンが見下ろせ、チェチェン独立派がプーチン政権の本拠を狙うテロに利用される恐れがある。そのため、再建後のホテルは現在より低い建物となるという。 ロシア各地で連続する大型テロを受け、プーチン大統領は在モスクワのチェチェン経済界への圧力をいっそう強めるとみられ、モスクワ名物のひとつだったホテルの解体は異例の急ピッチで進む可能性が強い。

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