安全都市 防犯に乗り出した市民と自治体

執筆者:水木楊2004年10月号

 日本の犯罪件数は年間三百万件に迫りつつある。「安全な国・日本」のイメージは崩壊しようとしているが、それよりも深刻なのは検挙率の低下。八年前の一九九六年には五〇%以上だったが、二〇〇一年にはついに二〇%を割り、米国以下になった。十人のうち八人の被害者が泣き寝入り、ないしはそれに近い状態に置かれていることになる。警察に頼ってばかりはいられない――市民の間に生まれた危機意識が自主的に防犯に取り組もうという動きになり、あちこちで新しい試みが始まっている。 京都市右京区西院。新選組が屯所を置いた壬生寺の近くを通り過ぎ、小さなビルの六階に上がると、「京都防犯鑑定協会」の名札がかかった事務所があった。理事長の大久保和雄氏(六四)は人当たりの良い男性である。事務の女性一人と目つきの鋭い男性四人、これが総勢である。四人の目つきが鋭いのはみな元刑事だからだ。 その肩書きは「防犯鑑定士」。彼らは依頼があると、「防犯チェックシート」を持参して、個人の家や会社の建物を訪れ、泥棒や強盗に入られやすいかどうかを鑑定する。シートには「周囲に敷地の大きな家が多いか」「隣が工事中か」「夜間浴室の窓は湿気防止のため開いているか」など三十二項目にわたるポイントが記されている。また、どのようにしたら有効な防犯対策が取れるかについて講演もする。

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