[ジャカルタ発]九月九日午前十時半頃、インドネシアの首都ジャカルタ中心部のオーストラリア大使館前で高性能爆薬を載せた車両が大爆発を起こし、九人が死亡、百八十二人が重軽傷を負った。インドネシアと豪州の治安当局は、国際テロ組織アル・カエダとの関連が指摘される東南アジアのテロ組織、ジェマー・イスラミア(JI)の犯行とほぼ断定。事件を受け急遽ジャカルタ入りしたダウナー豪外相は、「犯行の背景には、我が国とインドネシアが対テロ連携を強めていることに対する反発がある」と語り、両国が今後もテロ対策で緊密な協力を続けることを強調した。 両国治安当局は現在、首謀者と見られるJI上級幹部で爆弾製造の専門家ドクター・アズハリ(通称)およびJIジョホール(マレーシア)支部幹部を務めたヌルディン・ムハンマド・トプ両容疑者の行方を全力で追っている。 しかし豪外相の言葉とは裏腹に、今回のテロは、実は「見えない緊張関係」にある両国の溝を逆に浮き上がらせようとしている。 そもそも、JIは今回、なぜ豪大使館を標的としたのだろうか。理由は二つ考えられる。第一は、ハワード豪政権の対イラク政策だ。同国は、「米国が世界の保安官なら、豪州は副保安官だ」(ハワード首相)と広言。アフガン戦争で火蓋を切ったブッシュ米政権の「テロとの戦い」を全面支持し、イラクにも八百人規模の部隊を派遣している。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。