九月五日の日曜日、夕方まで仮公邸でのんびりと過ごした小泉純一郎首相は、午後六時前から、森喜朗前首相と青木幹雄自民党参院議員会長との会食に臨んだ。小泉政権の後見人を任ずる両氏と余人を交えず杯を交わすのはほぼ一カ月ぶり。場所は八月七日の前回と同じく、首相のお気に入りのホテル西洋銀座内の日本料理店「吉兆」だった。 小泉政権発足以来三年五カ月。党内基盤の弱い首相は二人を政権の後ろ盾と頼み、政局の節目節目にこうした会食の機会をつくってきた。巨体に似合わぬ細やかな気配りと腰の軽さで党内にアンテナを張り巡らす森氏と、参院自民党と最大派閥・旧橋本派をコントロール下に置く青木氏。首相にとって、党内の空気を知り「次の一手」を探る貴重な場であると同時に、二人にとっても首相に影響力を持つ実力者であることを内外にアピールする格好の舞台だった。 持ちつ持たれつの三人はこれまで巧みに決定的な対立を避けてきた。意見が合わない問題は言いっ放し、聞きっ放しでやり過ごす。黒白をつけない、深追いはしないことが暗黙のルールになっていた。内輪もめは結局、自らの権力基盤を弱めることにしかならないと分かっていたからだ。青木氏に「落目の焦り」

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