塀の中の執務室

執筆者:名越健郎2004年10月号

 ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区では、イスラエルによる6―8メートルの防護壁が突貫工事で建設中だ。インティファーダ(反イスラエル民衆蜂起)に出撃するパレスチナ人テロリストを封じ込めるのが目的。 これによって、イスラエルでのテロは激減したが、壁の中に閉じ込められるパレスチナ人の閉塞感も大変なものだ。壁の外に出るには、イスラエル当局の厳重な検問を通過する必要があり、長蛇の列ができる。 しかし、パレスチナ人は中東有数のジョークの達人。「壁の中」ではイスラエルを皮肉るジョークで憂さを晴らしている。 英国人、フランス人、イスラエル人、パレスチナ人が乗った旅客機が突然、墜落し始めた。機長が叫んだ。「重量オーバーです。どなたか犠牲になってください」。 まず、英国人が「女王陛下に栄光あれ」と叫んで飛び降りた。 次に、フランス人が「フランス万歳」と叫んで飛び降りた。 すると、イスラエル人が「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでパレスチナ人を放り投げた。 コーヒーカップに虫が入った時。 英国人は、カップを投げ捨てる。 米国人は、虫を捨ててコーヒーを飲む。 中国人は、コーヒーを捨てて虫を食べる。 パレスチナ人は、コーヒーと虫を飲み込む。

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