「ナポリの法王」

執筆者:星野 智幸2013年2月27日

 ローマ法王があす退位する。間もなく新しいローマ法王が誕生するだろうが、サッカー界のスター選手の中にも、かたずをのんで見守っている者たちが少なからずいるにちがいない。というのも、サッカー強豪国はじつはカトリックが多いのだ。ブラジル、アルゼンチン、スペイン、イタリア、ポルトガル等々。いわゆるラテン諸国である。

 

ローマ法王を批判したマラドーナ

 たとえば、マラドーナである。アルゼンチン出身のディエゴ・マラドーナはカトリック教徒であり、その地域の誰もが自然にそうなるように、ローマ法王に畏敬の念を抱いていた。ところが、実際にヨハネ・パウロ2世と謁見したとき、メディアに向かって次のような批判を口にすることになる。

「バチカンに行って、金でできた天井を見たあとで、ローマ法王が法王庁は貧しい子供たちを心配しているとか言ってるのを聞いた。でもよ、それなら高価な天井を売るとか何とかしろってんだ!」(『マラドーナ自伝』幻冬舎)

 カトリックの世界では大スキャンダルである。あのマラドーナが法王庁を罵ったのだから。

 この背景の一つは、マラドーナがイタリア南部のクラブ、ナポリの選手だったことだ。ナポリはそれまで万年降格争いの弱小チームだったが、マラドーナの加入によって、リーグ優勝2回、2位2回、イタリア杯優勝1回、UEFAカップ優勝1回という輝かしい戦績を収める。

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