オバマ米大統領(右)との首脳会談を成功させた安倍首相(c)AFP=時事
オバマ米大統領(右)との首脳会談を成功させた安倍首相(c)AFP=時事

 鈴木善幸政権時代に八方ふさがりになっていた日本外交を、電撃訪韓で打開した中曽根康弘首相以来の快挙といえようか。モスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議とホワイトハウスにおける日米首脳会談。安倍晋三政権は通貨、通商、安全保障など国際的なハードルを見事に乗り切った。

 7割にのぼる高い内閣支持率を背景に、近く環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明し、普天間基地の辺野古沖への移設についても県側に海面の埋め立て許可を申請する。鳩山由紀夫元首相が滅茶苦茶にした日米関係を修復し、中国への睨みを利かせる態勢を整えたのは、お見事といってよい。

 日本外交の失策を希(こいねが)うリベラル派は、さぞや不満に違いない。2月15-16日のG20会議の直前、彼らは日本の円安誘導が海外から袋叩きに遭う事態を心待ちにしていた。大手マスコミの解説者は「通貨戦争の下手人と言われかねませんよ」などという。「そうは思えませんが」と感想を述べると、途端に不機嫌な顔になった。

 

円安問題を焚き付けようとした隣国

 通貨戦争? 通貨を扱う経済外交も外交なのだから、誰がどのような意図で語っているかを見極める必要がある。欧州と新興国では文脈が異なる。が、その前に円安問題を焚き付けようとしていた隣国があることを指摘しなければなるまい。円高是正の過程でウォン相場が上昇し、即座に円安批判を繰り出した韓国である。

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