欧州で割と頻繁に耳にする経済ニュース用語に「ゴールデン・パラシュート」(黄金の落下傘)という言葉がある。自分だけ助かろうと、墜落していく飛行機から落下傘で飛び降りる。しかも、その落下傘は高価な金でできている……。転じて、企業が沈みゆくにもかかわらず法外な退任手当を手にする経営者の傲慢さ、自分勝手さを批判する時に使われる。


 日本語で「特恵的退任手当」などと訳され、企業防衛のために導入された制度だった。役員が就任時に「会社が買収された場合には、高額の手当を得て退任する」旨の契約を会社と交わす。そうすると、高額手当が壁となって、買収される恐れが少なくなるからだ。しかし、それは逆に、役員の役得でもある。企業が買収され、多くの従業員がリストラされて路頭に迷うにもかかわらず、役員だけが莫大な富を手に着地できる。


 スイスで3月3日、国民投票があり、上場企業経営者の高額の報酬や退任手当を規制する法令が整備される見通しとなった。憲法を改正し、役員報酬の金額を株主総会が毎年決定すると定める。また、役員に対して退職手当を出したり事前に報酬を決めたりすることも禁止。違反した場合には、3年以下の禁固刑が科せられる。「黄金の落下傘」を事実上規制する試みであり、同様の行為が問題になってきた欧州各国からも評価の声が相次いだ。

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