ヴァージン・グループを率いるリチャード・ブランソン会長は九月末、宇宙旅行を事業化する計画を発表した。二〇〇七年をメドに二千三百万円という価格で上空約百キロまで宇宙船で行き、二時間ほどの飛行時間で、五分間足らずの無重力状態を体験するというツアーだ。総額一億ドルを投じて機体を米航空宇宙開発会社スケールド・コンポジッツ社と開発し、五年間で三千人の参加者を見込む。 現時点では民間人が参加できる宇宙旅行はロシアの宇宙船ソユーズに同乗し、国際宇宙ステーションに短期滞在する方法しかないうえ、二十億円以上かかる。 ヴァージン・グループは同時期に、二つの事業を発表。一つは米国での音楽のネット配信事業。もう一つはナイジェリアの投資家との共同出資による、ヴァージン・ナイジェリア航空の立ち上げだ。 規制のある業種の「すき間」を狙って、新事業を立ち上げ、既存の枠組みを壊していくことを繰り返しているブランソン会長は「競争の少ない業界に変化を起こすことに興味がある」と語る。 携帯電話事業にその考え方が表れている。ヴァージンはMVNO(仮想移動体通信事業者)を通じて携帯電話事業「ヴァージン・モバイル」を世界で初めて展開した。自前では通信インフラを持たないが、通信会社からリセールを受けることで、自分のブランドの携帯電話事業を始めたのだ。リセールは安く受けられるから、低い価格で携帯電話サービスを消費者に提供できる。音楽店という販路を使い、若者の顧客への取り込みに成功。英国内の加入者は四百万人と、携帯電話会社で五位の地位を占める。しかも、同社の上場も果たし、その資金を元手に、ブランソン会長は次の事業に目を向ける。

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