「地方主導」で加速するインドの外資誘致

執筆者:山多豪太2004年11月号

IT産業だけで十億三千万人は食べられない。最大の課題・農村の貧困を解消するために、各州政府は海外からの大規模投資に熱い視線を向ける。[ニューデリー発]「私はインドを売り込むためにここにやってきた。世界中の人々に、インドがいかに変わりつつあるかを知って欲しい」――。 九月下旬に初の訪米を果たしたインドのマンモハン・シン首相は、ニューヨーク証券取引所で居並ぶ米有力企業経営者らを前に力説した。シン首相は、インドが経済発展を続けていくため、インフラ整備などに今後十年間で千五百億ドル以上の資金が必要だと説明、インドへの投資を強く呼びかけた。 十億三千万の民により良い職や生活を提供し、政治的安定を図るためには、年率七―八%程度の持続的な成長を達成することが至上命題。情報技術(IT)部門に代表される優秀な人材や、鉄鉱石、天然ガスといったほぼ手つかずの豊富な天然資源を持ち、それ自体が巨大な消費市場でもあるインドだが、慢性的な財政難と規制ゆえにインフラや産業基盤整備は大きく立ち遅れていた。 曲がりなりにも民主主義が行きわたっているため、国民の六割強・約七億人の農民や貧困層への配慮を忘れた政権は選挙に勝てない。経済発展で大きな業績を挙げたインド人民党(BJP)率いる前政権が、春の総選挙でまさかの敗北を喫したのも、IT景気に浮かれて地方・農村対策を怠ったからだ。

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