キオスクで買えるカラシニコフ

執筆者:竹田いさみ2004年11月号

 見知らぬ町を訪れると、かならず足を運ぶ場所が二カ所ある。一つは中央駅で、二つ目がマーケットだ。お目当ての中央駅がない町ならば、バスのターミナルを覗く。 中央駅やバス・ターミナルに佇んでみると、その町の規模や地理的な広がり、さらに市民生活の断片をつかむことが出来る。肉、魚、野菜、穀物、香辛料、花、雑貨品を並べるマーケットも同じだ。緑黄色野菜が鮮やかな色彩を競いあうマーケットか、それとも土色のジャガイモが幅を利かせているかで、食生活の豊かさの度合いを垣間見ることができる。民族の生活史や社会史も端的に表している。 数年前に東欧諸国を旅したとき、ブルガリアの首都ソフィアの中央駅に立ち寄ったことがある。中央駅の前では、露天商が所狭しと日用雑貨品を並べる、どこにでもある風景が展開していた。 しかし駅構内に入り込み、キオスクを覗き込んでいると、魚釣りの釣竿を陳列している店が眼に止まった。駅構内で釣竿かと思いつつ、店内に入ってギョッとした。釣竿の陳列棚のとなりに、猟銃やピストルを陳列している棚があったからだ。モデルガンにしては種類が豊富だなと思ってよく見たら、なんと本物の猟銃やピストルであった。 釣竿販売店が猟銃・ピストルを同時に販売することも、日本人の常識からは、かなりかけ離れている。しかしブルガリア人の発想では、獲物をとるという目的からすれば、釣竿も猟銃・ピストルも同じ範疇に入ることになる。魚と野鳥、小動物の違いがあっても、獲物という点でなんら変わりはないのだという。

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