旧ソ連の大物スパイ、リヒャルト・ゾルゲが処刑されて十一月七日で六十周年。ロシアではテレビが特別番組を編成、ゾルゲを称える書籍も次々出版され、ゾルゲ・ブームが起きている。国営テレビはゾルゲを愛国者と称え、NTVテレビはゾルゲの独ソ開戦情報を無視したスターリンを批判的に扱った。 ブームの背後には、旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身者が中枢を占めるプーチン政権がある。政府筋によれば、プーチン大統領がKGBを志したのは、フランス製作のゾルゲ映画を見たことが契機だとされ、個人的にゾルゲを敬愛しているとの説も。 ロシアではゾルゲだけでなく、情報機関幹部の名誉回復が著しい。六月には、プーチン大統領が師と仰ぐ故アンドロポフKGB議長の銅像がカレリア地方など二カ所に誕生。九月には、モスクワ郊外のジェルジンスキー市に、ソ連秘密警察の生みの親ジェルジンスキーの銅像が復活した。プーチン政権を恐れるルシコフ・モスクワ市長は、ソ連解体前に撤去されたジェルジンスキー像を連邦保安局(FSB)本部前に復活させるよう早々と提案している。

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