キプロスをめぐる独露対立の構図

執筆者:渡邊啓貴2013年3月22日

 人口88万人、GDP(国内総生産)総額でユーロ圏全体のわずか0.2%にすぎない小さな国の課税問題が、ユーロ圏を再び揺さぶり始めた。とりつけ騒ぎを回避するために、キプロスの銀行は閉鎖されたままである。

 騒動の直接的なきっかけは、アナスタシアディス・キプロス大統領が銀行預金への課税を公表したことである。

 昨年6月、ユーロ圏17カ国からの支援計画、ロードマップが作成されたが、そこでは銀行預金課税制度の見直しがあげられていた。しかし、ロシアの影響を強く受けた前大統領の下では具体的な政策がなかなか実行されず、本年2月24日に選出されたリベラル派のアナスタシアディス新大統領の下で、急速に改革が進められるようになった。

 当初全ての預金に対する課税が提案されたが、3月16日には10万ユーロ以上の預金に対して9.9%、それ以下の預金に対しては6.75%の課税率が提示された。これに対して、国民が強く反発した。とくに、キプロスの大手2銀行が破綻の危機に瀕しており、課税はその手当てのためという見方も強まった。「銀行破綻のつけをどうして国民にまわすのか」という声が大きくなったのだ。

 同時に、トロイカと呼ばれる欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)、欧州委員会という3つの国際機関による、緊縮政策を強いる財政危機打開策に対する反発も強い。キプロス国民が犠牲になっているという論法は、ギリシャやほかの南欧諸国民と同じである。

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