米大統領選挙後のドル安加速の背後に、主要国中央銀行の姿が見え隠れする。ドル相場の緩やかな下落を促す方向で足並みをそろえたからだ。GDP(国内総生産)比六%に迫った米経常赤字がドル急落を招く事態を避けるため、早いうちにドルのジリ安を促し、経常赤字削減につなげようというシナリオと見られる。 ニューヨーク連銀のエコノミストが十月末に発表したリポートで経常収支問題に警鐘を鳴らす一方、欧州中銀からは「ドル安は原油高による域内インフレを防ぐ効果を持つため望ましい」との声が出た。日銀も緩やかなドル安なら静観するとの姿勢を示し、中国の中銀は外貨準備のドル建て資産を減らす方向で動いている模様。 今のところ、この動きに各国財務当局側は距離を置いている。日本やユーロ圏の政治家は、輸出にマイナスとなる自国通貨高は簡単には受け入れられない。そこで「政治任せでは、世界経済の不安定要因である米経常赤字は減らない」とばかりに、セントラルバンカーが先んじて動き出した構図。ドルの「軟着陸」は、年明けのG7(先進七カ国)財務相・中銀総裁会議でも重要テーマになりそうだ。

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