中国に広がる「一党独裁」終焉のムード

執筆者:藤田洋毅2004年12月号

政権トップも中堅幹部も、共産党の下野を視野に入れている。もし、「執政能力建設」がうまくいかなければ――。「冷厳かつスマートに、国益を追求しなければならない」――胡錦濤指導部を支える中堅幹部らが、熱心に語り合っている。党中央の宣伝部・政策研究室、国務院の外交部・財政部、軍の総政治部などに所属し、将来を嘱望される若手エリート官僚の面々だ。大学の同級生を軸としたグループで、しばしば集い食事しながら忌憚のない意見を交換しているという。驚くべきは、「たとえ共産党が下野しようとも……」という一言が、ごく自然に会話の端々に飛び出すことだ。 この日、台湾回収を力説したのは、軍の中堅幹部だった。お決まりの、中華民族の悲願達成などが理由ではない。「わが民族の総合国力は今後も増大し続ける。やがて、五十年も経てば、東アジアにおける覇権を維持しようとする米国の根本戦略と激突するのは不可避だ。今のままでは台湾海峡が激突の舞台となり、大陸にも甚大な被害をもたらす。だが台湾を回収すれば、激突の最前線を太平洋側に五千キロ押しやれる」。 続けて彼は「共産党政権が続くかどうかは、この際、大きな問題ではない」と言い切った。「共産党が下野すれば、しばらくは混乱が続くだろう。だが、わが民族はソ連崩壊の教訓を学んだ。なにより、物資欠乏で混乱が長引いたソ連とはファンダメンタルズが違う。早急に新たな統治機構を発足、国内を安定させ、国益追求を加速させるのだ」――一座の面々は、しきりにうなずきあっている。

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