香港で高まる「完全民選」への要求

執筆者:樋泉克夫2004年12月号

現在の選挙制度で民衆をいつまでも納得させることはできない。「普通の選挙」への要求がさらに高まるとき、それは大陸中国の民衆の声とも重なってゆく。[香港発]十月初め、香港では九月中旬に選ばれた議員による最初の立法会(議会)が開かれた。規則では、就任の宣誓を「効忠中華人民共和国特別行政区(中華人民共和国特別行政区に忠誠を誓う)」と結ばなければ議席を失うとあるが、この規則に敢えて逆らおうとした新人議員が現れた。 トレードマークの長髪から「長毛」と呼ばれる梁国雄だ。真のマルキストにして貧乏人の味方だと自任し、大企業家と手を組んで香港経営を続ける北京を修正主義と罵倒する彼は、まず「天安門事件の冤罪を雪げ」と大声を張りあげた。そして「効忠中華人民」といったまましばらく口を閉じ、数秒後に「共和国……」と続けたのだ。 形式的には議会規則に反していないが、議場にいた誰の耳にも「中華人民に忠誠を誓う」としか聞こえなかったはず。「共和国」と「特別行政区」、つまり北京と香港の両政府にはっきりとノーといいたい。だが、そこまでは踏み切れない――。彼の行動は、香港住民の“声なき声”を微妙に代弁するようだ。民主化志向は高まるが……

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