「欧州の盟主」フランス大統領の苦衷

執筆者:渡邊啓貴2013年4月7日

 3月28日木曜日夜、オランド大統領はテレビ会見を行なった。昨年5月の政権就任以来11カ月が経過したが人気は低迷。国民に改めて所見を示す必要があったからである。大統領自身、「予想したよりも危機は長引いている」と言わざるを得ないほどであった。これまでのどの政権よりも支持率が急速度で低下したオランド政権の苦しい立場をそれは表している。

 オランド社会党政権をめぐる内外の情勢は予想以上に厳しく、プラスの要因が少ない。1時間半の会見では、大統領が受け身に回る局面もあった。当然翌日の保守系紙『フィガロ』は、オランドのあいまいさを厳しく批判した。欧州統合の発展が国民生活の圧迫を招いているという単純な図式が、キプロス銀行危機によって強調され、南欧諸国国民の反EU感情を増幅させている。この空気はフランスでも次第に広がっている。昨年の大統領選挙のときには、欧州の盟主としてEUの南北問題解決の旗手を豪語したオランド大統領であったが、足元が揺らいでいる。

 

雇用不安

 この会見でもっとも大きな焦点となったのは、失業・雇用対策と、いかに購買力を上昇させるかであった。保守政権が緊縮財政と減税効果による景気回復を強調するのに対して、オランド政権は歴代社会党政権と同じように、雇用増加と産業構造の近代化による成長促進を強調する。

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