台湾で4カ所目の原子力発電所となる「第4原発」(核四)の稼働をめぐり、その是非を全台湾住民に問う住民投票が年内に実施される見通しだが、予想を大きく上回る反対運動のうねりが起きており、建設推進の馬英九政権を慌てさせている。先月には20万人の大規模な反対集会も開かれ、馬総統を支えるべき与党幹部の「造反」も相次ぐ。福島の事故以来、アジアでここまで原発推進が政治問題化するケースは初めてだ。

 

「住民投票」という奇策

 台北中心部から40キロ圏内にある「核四」(筆者撮影)
台北中心部から40キロ圏内にある「核四」(筆者撮影)

 現在、台湾では3カ所で計6基の原発が稼働中で全電力の2割を担っている。台湾の商業原発のスタートは1978年でアジアでは日本に次いで早く、立地が人口集積地に異様に近いことが特徴だ。建設時期が国民党の強権的な独裁政治の時代で、反対運動など考慮する必要もなかったことと関係している。第1、第2原発はいずれも新北市に位置し、台北市の中心部から30キロ圏内にある。第3原発は南部の屛東県。第4原発も新北市にあり、台北市の中心部からわずか40キロ圏内。数キロの距離で町や村も点在し、風光明媚な海岸線で知られる観光地・貢寮も近い。台湾北部沿岸を1時間ほど車で走れば3つの原発が普通の主要道路のそばに次々と現れるから驚かされる。第1、第2原発は老朽化が進んだこともあり、欧米の団体などから「世界で最も危険な原発」の上位に挙げられることも多い。

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