大使夫人の心得

執筆者:西川恵2004年12月号

 ラフルアー宮澤啓子さんは宮澤喜一・元首相を父に持ち、米外交官と結婚した。最近、そのご主人が駐マレーシア大使に任命され、十月初め、宮澤さんは米国務省が開いた新任大使夫妻を対象にした研修に参加した。

 ワシントンでの研修は二週間。国務省担当官が講師で、身の安全を守るセキュリティー、メディア対応法のメディア・トレーニング、経費管理、私的・公的物品管理などテーマは多岐にわたった。

 大使夫人だけ七人集まったある日のテーマは「大使夫人の心得」。まず各自考えを書いた後、ディスカッションをした。宮澤さんは勇気を出して質問した。「私たち妻には手当てがなく、雇用規定もない。『夫について行かない』という選択をしてもいいのでしょうか」。別の夫人も言った。「私は企業コンサルタントで、夫より稼いでいる。そのキャリアを捨てて行かなければならないのが不満です」。講師は逆に問いかけた。「それはあなた方の自由です。でも夫が大使という一番意義のある素晴らしい時間を過ごそうという時、その体験を共有しないのは夫婦として残念だと思いませんか」。

 宮澤さんは大学卒業後、ずっと仕事をもち、結婚してからも外交官夫人とキャリアウーマンを四苦八苦しながら両立させてきた。外資系化粧品会社、モード企業など、夫の転勤の度に職を替え、現在は東京で人造ダイヤをカタログ販売するビジネスをしている。

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