日本と台湾の漁業交渉が合意に達したことを受け、11日の日本の新聞各紙の朝刊はほとんどが「中台間にくさび」という見出しを掲げながら、分析を加えていた。今回の合意が持っている戦略的意味を表すには「くさび」という言葉がふさわしいことに異論はないが、では、どうして今回の合意が「くさび」になるかという点についてはもう少し突っ込んだ解説があっても良かったのではないかと感じた。

 毛沢東の著作に有名な「矛盾論」というものがある。厄介な問題の背後には、さらに大きな問題、つまり「主要矛盾」が存在し、それへの認識がなければ「従属矛盾」たる目の前の問題を正しく理解し、解決することはできないという論である。

 この矛盾論にならって言えば、日本と中国と台湾の三者がそれぞれ領有権を主張して複雑に対立しているのはあくまでも「従属矛盾」であり、背後には中台分断という「主要矛盾」が存在している、と考えることができる。

 尖閣諸島は台湾に付属する島嶼である、というのが中国の公式な立場である。中国は尖閣諸島への領有権を主張するようになった1970年代以来、日清戦争の敗北で台湾が日本に割譲された際、尖閣諸島もどさくさに紛れて日本にかすめ取られた、という主張を続けてきている。

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