援助政策を考え直す:経済学から国際政治学へ

執筆者:平野克己2013年4月18日

 この4月から「援助政策研究会」を立ち上げた。従来の援助論とはまったく異なる視点から援助政策を検討するためである。

 これまでの援助論は凡そ、どのような支援が開発途上国の開発をもっともよく促進するかという観点から語られるのが常であった。しかし、正確にいえばこれは援助政策そのものを見ているのではなく、開発というテーマを側面から、間接的に検討しているのである。これらは開発研究の一種であるから、主に開発経済学の手法が使われてきた。また提言相手は援助国の政府ではなく、開発途上国の人々ということになる。

 しかしこれでは日本政府に対する提言にならない。援助の大宗である開発援助に開発効果が求められるのは当然であるが、開発効果は一義的には援助受取国に帰属するのであって、それがいったい援助の出し手にどのような利益をもたらすのかが問われなければならない。それこそが援助を供与する目的だからである。たとえばもし、日本の援助によってある国の経済力が高まり、その結果その国が反日的になって日本との関係が緊張するような事態を招くならば、日本の納税者がそのような援助政策に賛成するだろうか。
 私たちがめざすのは、援助を提供することで日本がどのような利益を得るのか、わが国にとって望ましい援助政策とはなにかを探索することである。そもそも、日本への貢献が期待できないのであれば公金を投入して政府が援助を行なう意義を主張できず、納税者に対して説明がつかなくなる。援助に限らず政策とはすべからくそういうものであり、主権者への説明責任を負っている。援助が政府の行なう政策である以上は、援助を受け取る国における効果と同時に、日本にとっていかなる意味と効用があるのかをはっきり示さなくてはならない。

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