その時、会場にいた700人を超えるフィリピンの華人企業家は唖然と声を失い、また呆然としたに違いない。なんとアキノ大統領から「正しい納税」を求められたからだ。

 3月22日、マニラでのこと。フィリピン全土から750人の有力華人企業家が集まり、フィリピン華人社会を統括する菲華商聯総会(FEDERATION OF FILIPINO-CHINESE CHAMBER OF COMMERCE AND INDUSTRY,INC.)の第29回代表大会が開催された。

 2年に1回開かれる同大会へのアキノⅢ世大統領(以下、アキノ大統領)の参加は2011年の前回大会に続いて2回目。今回は内務、司法の両大臣に加え、華人系の税務局長を引き連れて出向き、菲華商聯総会を筆頭とする華人団体が積極的に進めている教育、医療、災害救援などの慈善事業のフィリピン社会に対する高い貢献度を賞賛し、中国語で何度も「謝謝你們」と口にしていた。

 続けて中国語で「えびシュウマイとマッサージが好きだ」などと軽口を利いて会場を沸かせた後、シリアスな口調に転じる。11年から13年の間の納税実績を示しながら、福建南部方言で「申し訳ないが、正しい納税をお願いする」と。フィリピン華人の大多数が福建南部をルーツとしているから、ということだろう。次いで英語で「国民の義務を守ることこそ、みんなに対する私の心からの呼びかけだ」と訴え、未納者は司法大臣か税務局長との話し合いに応じてもらいたいと続けた。

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