北朝鮮「危機」の深層(下)「出口」への模索

執筆者:平井久志2013年4月20日

 北朝鮮はかつて、1968年のプエブロ号拿捕事件、76年の板門店ポプラ事件、83年の米韓合同軍事演習チームスピリット実施時、核拡散防止条約(NPT)脱退へとつながった93年のチームスピリット実施時などに「準戦時態勢」を宣言した。いずれも北朝鮮が米国から攻撃を受ける可能性を感じた時だ。特にプエブロ号事件と板門店ポプラ事件は北朝鮮が米軍と直接対峙する事態となり、米軍は朝鮮半島周辺に大規模な軍事力を配置し北朝鮮を圧迫した。ポプラ事件の時は、北朝鮮は約1年半もの間、準戦時態勢を維持した。

 北朝鮮は今回、今にも戦争が起きるような状況を作り出しているが、「準戦時態勢」の発表はない。

 米韓両国は定例の米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」を3月11-21日に、野外機動訓練「フォールイーグル」を3月1日-4月30日にそれぞれ実施すると発表した。北朝鮮は「キー・リゾルブ」が始まる3月11日から朝鮮戦争の休戦協定は白紙化されると威嚇した。米軍は北朝鮮側の挑発的な威嚇に対抗して、今回の軍事演習で北朝鮮に軍事的な圧迫を掛けた。米国防総省は3月18日、「フォールイーグル」に核搭載可能のB52戦略爆撃機が参加することを明らかにした。B52はグアムのアンダーセン空軍基地から訓練に参加し、核は搭載していなかったとした。これは米国の「韓国防衛」の決意を北朝鮮側に示すものだった。

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