「羊の皮を着た中国」に怯えるASEAN

執筆者:黒瀬悦成2005年1月号

域内統合に一歩前進したASEAN諸国だが、「東アジア共同体」構想には怖じ気を振るう。そこに中国の「覇権」の影を見るからだ。[ビエンチャン発]二〇〇四年十一月二十九日と三十日の両日にわたってラオスの首都ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は、今から五年か十年後に「ASEANの『終わりの始まり』を告げた会合」として記憶されることになるかもしれない。 ラオスでの首脳会議でASEANは、「経済」「安全保障」「社会・文化」の三分野で、二〇二〇年までに「共同体」と銘打った事実上の域内統合を実現させることを改めて確認。その上で、二〇一〇年までの六年間に加盟十カ国が統合に向け実施する具体策を定めた中期計画「ビエンチャン行動計画」を採択した。さらに今回は、国連から地域機構として正式認知を受ける制度的要件を満たすため、加盟国の行動規範を定める「憲章」の起案を正式に決定。また、二〇〇六年に任期切れとなるアナン国連事務総長の後任にタイのスラキアット外相を統一候補として推すことでも合意し、域内の結束と国際的地位の底上げに向けた決意を誇示してみせた。 ところが、こうした意気込みとは裏腹に、最終的に会議の話題を独占したのは、ASEANと日中韓を軸とした「東アジア首脳会議」を二〇〇五年にマレーシアで初開催すると決めたことだった。

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