「日本原電」危機は「電力業界崩壊」の序曲

執筆者:杜耕次2013年4月30日
 日本原電の社外取締役を退任すると報じられた前東電会長の勝俣氏 (C)時事
日本原電の社外取締役を退任すると報じられた前東電会長の勝俣氏 (C)時事

 日本で最初の商業用原子炉を稼働させた卸電力会社、日本原子力発電(日本原電)が破綻の瀬戸際に追い込まれている。保有する3基の原発は再稼働のメドが立たず、それどころか、地元の反対や老朽化、さらに活断層問題で3基とも廃炉が不可避の情勢。株主であり取引先でもある電力業界を頼ろうにも、実質国有化された東京電力はもとより、巨額赤字に直面して値上げを求めている関西電力や東北電力など親密な関係先には支援する余裕も大義名分もない。4月20日、日本原電の社外取締役に収まっていた前東電会長の勝俣恒久(73)が6月の株主総会で退任することが報じられた。「破綻を前に大物が逃げ出した」「廃炉専門会社への業態転換が固まった」(いずれも業界関係者)――。日本原電の危機は電力業界崩壊の序曲ともいえる。

 

「勝俣氏も逃げ出した」

 勝俣は2011年6月、東電会長在職のまま日本原電の社外取締役に就任した。元東電会長の田村滋美(74)が退任し、東電枠の取締役ポストが1つ空いたためその「穴埋め」というのが理由だったが、当時は福島第1原子力発電所事故発生からまだ3カ月。「重大な原発事故を起こした東電のトップを原発専門会社が役員に迎えるのはおかしい」との指摘があり、民主党政権内でも問題視する声が上がったため、勝俣は1年目の役員報酬(年間180万円)を辞退して批判をかわした。

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