カブールの日本レストラン

執筆者:西川恵2005年1月号

 アフガニスタン国民による初の直接選挙で大統領に選ばれたカルザイ大統領の就任式が十二月七日、首都カブールで行なわれた。参列した外交団の中に、新生アフガンの初代日本大使だった駒野欽一氏(現在は本省でNGO・アフガン支援調整等大使)の顔もあった。 駐アフガンの日本大使館開設(二〇〇二年二月)の任を負い、この九月まで二年七カ月にわたって在勤した同氏にとって、アフガンは忘れがたい国だ。赴任して間もなく腸チフスを患った。テロ情報で行事出席を取り止めることも一再ならずあった。しかし一方で、「日本大使公邸には要人がしょっちゅう出入りする」と言われるほどのネットワークを築いた。同氏はペルシア語が専門で、現地の人々と通訳を介さずに意思疎通ができる。しかしもう一つの有力な武器が、日本料理を駆使した食卓外交だった。 テロで外出がままならない外交団にとって、夜の食事会は重要だ。アフガン政府要人、国連関係者、各国大使らと、招き、招かれしながら情報を交換し、収集する。美味しい食事が出る大使公邸には当然、人が集まり、三本の指に数えられたのがフランス、中国、日本だった。もっともフランスと中国は本国から料理人を連れてきていたが、当初、駒野大使にはアフガン人料理人しかいなかった。ところが日本人の料理人が来てくれることになったのだ。

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