マレーシア総選挙と「華人の反乱」

執筆者:野嶋剛2013年5月3日

マレーシアの総選挙が目前に迫っている。1957年の独立以来の絶対安定勢力だった与党連合・国民戦線が大幅な議席減を喫し、「政治大津波」と呼ばれた前回2008年の総選挙から5年が過ぎた。今週、マレーシアに飛んで各方面の選挙関係者から話を聞くと、だれもが「マレーシアの憲政史上、最大の激戦だ」と口にした。つまり、2008年以上の接戦ということである。

2008年は与党連合・国民戦線の議席数が40年ぶりに3分の2を割り込んだが、今回は過半数を失うかどうか、つまり、政権交代が起きるか否かの一点に見どころは絞られたといえる。

マレーシアは、マレー系、中華系、インド系の多民族国家で、民族別に組織された政党が与党連合を組んできた。そのなかでも、マハティール元首相がかつて率いた統一マレー国民組織(UMNO)を中心とする与党連合ががっちりと政権の座を守ってきた。

今回の現地取材で実感したのは、前回総選挙で与党連合・国民戦線の事実上の「大敗」の原因となった「華人の離反」が今回も続いており、華人票はまったく与党連合に戻ろうとしていないということだ。それどころか、前回以上に野党連合側に流れる可能性が高いと思えた。2008年には、与党連合の華人政党・MCAの獲得議席数は15議席にとどまり、野党連合の華人政党・DAPは28議席とほぼ倍近い勢力になったが、今回、その差はさらに開きそうな勢いだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。