オランド仏大統領来日前の「拭えない懸念」

執筆者:国末憲人2013年5月7日

 フランスのオランド大統領が6月6日から8日まで、国賓として日本を訪問する日程が固まった。前任のサルコジ氏は大統領任期中に2度来日したとはいえ、1度は洞爺湖サミットへの参加、もう1度は東日本大震災後間もなく数時間立ち寄っただけ。日本への関心の薄さが露骨だった。オランド氏の場合、就任まだ1年しか経っておらず、しかも「国賓」としてという力の入れようだ。かつて親日外交を繰り広げたシラク元大統領ほどではないにしても、日本の地位と実力を正当に評価しようとする姿勢がうかがえる。

 今のフランスが日本に最も期待するのは、産業間の協力だ。これまたサルコジ時代との比較で言うと、財閥や大手グループと親しい関係を築いたサルコジ氏は、戦闘機、航空機、原子炉といった大型商品の売り込みに熱心だった。多数の財界幹部を引き連れた大名行列風の外交は、これら仏大型商品のセールス行脚の様相を見せていた。当然のことながら、仏製戦闘機にも仏製原子炉にも関心のない日本は、相手にするに値しない存在だった。

 オランド政権は、サルコジ氏が見向きもしなかった人権問題も外交の重要な要素として掲げており、少なくとも関心の幅が広いように見受けられる。売り込みも、大型商品ばかりではない。日本に対しては、両国の研究開発面での協力やフランスの研究機関への投資を進めようと画策しているほか、自動車や原子炉開発の分野ですでに進んでいる日仏企業間の連携強化も目指すという。フランスは、中国偏重外交からバランスの取れたアジア外交に立ち返りつつあるといえる。

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