NHKはBBCの「英断」に学べ

執筆者:簑葉信弘2005年1月号

イラク報道でつまずいて一年、BBCは新経営委員長のもとで改革を急いでいる。NHKは何も変わらないのか。 BBC(英国放送協会)の二〇〇四年はいつになく暗い出来事で始まった。イラクの大量破壊兵器に関する政府文書の情報操作疑惑を報じた記者リポートが、一月末の独立司法調査委員会(ハットン委員会)で「根拠がない」と断罪されたのである。 これを受け、ギャビン・デイビスBBC経営委員長は即日辞任した。経営委員会にはBBCの放送が「公共の利益に奉仕する」という目的を果たしているかどうかを監督する役割がある。この事件で経営委員会は現場を預かる業務執行部(理事会)の言い分を擁護して政府と争ったが、ハットン委員会にリポートの誤りを指摘され、チェック機能の欠如を批判されたため、委員長がその責任を取ったのである。現場の責任者であるグレグ・ダイク会長も翌日これに続いた。 ダイクの辞任劇の真相はこうだ。彼は当初、経営委員長がBBCを代表して責任を取った以上、自分が辞めることはないと考えていた。しかし、会長職の任免権者である経営委員会の信任を得ておく必要があると考えて辞表を出したところ、案に相違して受理されてしまったのだ。ダイクによれば「委員会にクビを切られた」のである。

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