[カイロ発]キリスト教マロン派、イスラム教スンニ派、同シーア派などが入り組み「宗教の博物館」と呼ばれるレバノンが、血で血を洗う内戦から抜け出して十五年。復興を遂げつつある東地中海沿岸の小国で、隣国シリアとアメリカ、フランスの思惑がぶつかっている。その構図は、エミール・ラフード大統領(六八)の任期延長を巡って表面化した。「十一月に任期(六年、連続再選禁止)が切れるラフード大統領に、シリアが憲法を改正して続投するよう求めた」との観測が流れたのが二〇〇四年初め。大統領とライバル関係のラフィク・ハリリ前首相(六〇)=当時は首相=がこれに反発したという情報も出て、関心が集まった。 動きが出たのは八月。大統領と前首相が相次いでシリアを訪問し、バシャール・アサド大統領(三九)と会談したのだ。イスラエルと緊張した関係にあり、武装したパレスチナ難民を抱えるレバノンは、シリアに軍事的に依存している。そのため、レバノンに反シリアの政治家は存在しないと言ってもいい。任期切れを前にした大統領と前首相は、シリアに最後の「お伺い」を立てたのだ。 これに対して、憲法改正の動きを牽制した米仏両国は九月、国連安全保障理事会で「レバノンに駐留しているシリア軍の撤退」と「公正な大統領選挙」を求め、安保理はこの決議を採択。しかし、レバノン国会は憲法を改正し、大統領任期を三年間延長したのだった。

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