どうしてこんなに屈託のない笑顔を浮かべることができるのか。経済界の大物たちは呆気にとられる思いで、この日の主賓を凝視せずにはいられなかった。十二月七日夜、東京・虎ノ門のホテル・オークラで開かれた「首相を囲む会」でのことである。日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)や今井敬名誉会長(新日鉄名誉会長)を前に、小泉純一郎首相が上機嫌で語ったのは、郵政民営化と並ぶ小泉構造改革の目玉と位置づけてきた国と地方の税財政改革(三位一体改革)についてだった。 遡ること十一日前の十一月二十六日、政府、与党は難産の末に三位一体改革の全体像を決定した。国から地方への補助金を二〇〇五、〇六年度に二兆八千三百八十億円削減し、その見返りに〇四年度に約束した分を含め二兆四千百六十億円を国税から地方税へ税源移譲するという内容である。補助金削減、税源移譲ともに小泉内閣として閣議決定したものの、自民党の参院選公約に盛り込んだ「三兆円規模」の目標には及ばなかった。それより何より、地方側が裁量権拡大のために求めた「補助金廃止―一般財源化」がほとんど認められず、中央省庁に権限を残す「補助率引き下げ」にすり替わったことに、地方の首長やマスコミは手厳しい批判を加えていた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。