ウクライナ「オレンジ革命」の真実

執筆者:名越健郎2005年1月号

「ユーシェンコ、ユーシェンコ」 大統領選の不正問題で紛糾したウクライナの首都キエフは、朝から夜中までオレンジの旗やリボンを掲げた数十万人のデモ隊が、親欧米派の野党候補ユーシェンコ元首相の名を大声で連呼しながら練り歩く。車もそれに合わせて3回クラクションを鳴らし、街全体が解放区の雰囲気だった。 同氏は9月に体調を壊し、ハリウッドスター級の容貌はすっかり変わったが、カリスマ性と大衆動員力は増大。権威主義的なクチマ政権を追い詰めた。対する親ロシア派の与党候補ヤヌコビッチ首相は、悪玉とみなされる。青年時代、婦女暴行や窃盗で2度投獄され、現在は東部マフィアの代表格と指摘される。だから、ウクライナ人はアネクドートで首相を徹底批判する。 大統領選決選投票の日、ヤヌコビッチ首相の補佐官が首相に報告した。「良いニュースと悪いニュースがあります。良いニュースは、中央選管が首相の当選を発表しました」「悪いニュースは何だ」「投票した人はほとんどいません」 ヤヌコビッチ首相が車で視察中、ブタを轢き殺してしまった。首相は財布から100ドル出して運転手に渡した。「これで村の住民に謝ってきてくれ」 運転手が住民に言った。

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