スマトラ沖地震「復興」をめぐる主導権争い

執筆者:黒瀬悦成2005年2月号

国連や支援各国が繰り広げる主導権争い。投入されるヒトやカネは、本当に復興の役に立つのか――。[ジャカルタ発]インドネシア・スマトラ島沖のインド洋で二〇〇四年十二月二十六日に発生したマグニチュード9.0の巨大地震と津波は、インドネシア、スリランカ、インド、タイ、マレーシアや東アフリカ諸国などで計十五万人以上が死亡する未曾有の大惨事となった。 最も被害の甚大だったインドネシアを中心とする東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は一月六日、国連や主要援助国を招いてジャカルタで被災国支援緊急首脳会議を開催した。参加各国・機関は、国連が主導的役割を果たすことを確認。アナン事務総長は会議で、被災者に対する人道支援として今後半年間に総額九億七千七百万ドル(約一千億円)が必要だとする緊急アピールを発表し、各国の協力を求めた。 インド洋津波は、イラク戦争に代表される米国の「単独行動主義」の前に威信を傷つけられてきた国連が、災害を「奇貨」として再び求心力を回復する大きな契機となった。国連人道問題調整事務所や世界食糧計画、国連児童基金など、世界的ネットワークを持つ援助関連の常設機関を抱え、実績やノウハウも豊富な国連が復興支援の中心的存在となるのは、ごく自然な流れであるようにも見える。

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