アフリカ「人口ボーナス論」を見直すべし

執筆者:平野克己2013年5月18日

 第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が近づいてきて(6月1日から横浜で開催される)、このところほぼ毎日、どこかで講演したり会議に出たりしている。いまもホテルの部屋でこれを書いている。

 

 2008年のTICAD IVで企業がTICADに初めて参加し、援助政策のなかに官民連携が謳われて、その後も日本企業のアフリカ進出が進んだ。今回も「アフリカをどう援助するか」といったかつてのテーマはほとんど見られず、アフリカビジネスに関する質問や議論が多い。そこでよく目にし、耳にするのが、世界各地域のなかで唯一2%を超えているアフリカの人口増加率と、若年人口比率の高さを、アフリカの魅力として売り込む論調である。老齢化する日本と東アジアとは対照的に、アフリカは膨大な人口ボーナスによって祝福されているという主張だ。

 これを言い始めたのは欧米のコンサルタント会社ではなかったかと思う。いま最先端のアフリカビジネスはエクイティ・ファンドのようだが、要するに資金勧誘のための売り込みではなかろうかと、私は思っている。本気で、真面目につくられた議論とは思えない。

 つい数年前まで、アフリカの人口増加は貧困問題の根源と言われ、開発政策や援助政策のひとつとして人口抑制策が検討されていた。いまの人口ボーナス論とはまったく逆だったのである。

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