国民議会選挙が行なわれるイラクで、反体制指導者だったアハマド・チャラビ氏が活発な動きを見せ始めている。暫定政府から逮捕状を突きつけられ、アメリカという後ろ盾も失うなど失脚状態にあったが、亡命中に蓄えた財力にモノを言わせ復権を狙っているのだ。 見逃せないのは、チャラビ氏がイランに急接近している点。そもそもアメリカがチャラビ氏への不信感を強めたのはイランに機密情報を漏らしている疑いが浮上したためだが、最近ではイランを敵視するシャーラン暫定国防相を批判するなどの言動が目立っている。 チャラビ氏は選挙で最大の支持を獲得すると見られている「統一イラク連合」の候補者の一人。イスラム教シーア派の大アヤトラ(最高位聖職者)・シスタニ師が承認した同政党は、表向きスンニ派やクルド人も加えて「挙国一致」の体裁を整えてはいるが、実際には親イランのシーア派主導だと言っていい。 その中心となるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)代表のアブドルアジズ・ハキム師は「新生イラクはイスラム国家であるべきだ」と繰り返し強調しており、やはり多数を占めるダアワ党もまた、イランの影響を強く受けた宗教色の強い政党だ。 チャラビ氏の不人気は相変わらず。ただ、統一イラク連合からすれば、世俗派の象徴のような同氏は国民の宗教政党への警戒を解くのに役立つ。時ならぬ復権劇は、選挙後のイラクがイランに急接近する懸念を示唆しているとも言えそうだ。

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