『アメリカCEOの犯罪』は日本の金融関係者、ジャーナリスト、そして霞が関のお役人には是非とも読んでもらいたい一冊である。 著者、ハーバード・ビジネス・スクールのD・クィン・ミルズ教授は「金融スキャンダルは、エンロン、ワールドコムにとどまらず、問題は未だ終わっていない。しかし、かつてのアメリカでは、こういった不祥事は起こりえなかった。公正な会計、透明性の高い財務結果の公表、倫理観をもつ金融専門家などが存在していたからだ」と、アメリカの金融の過去二十年間の変化を分析する。そして危機的状況にある現在、政府や投資家は何ができるのかを提案する。 私たち日本人は、金融に関して「日本は遅れているが米国は進んでいる」という固定観念を持っている。そして遅ればせながら「米国のマネ」をするのが常だ。その具体例としては、「財務諸表の四半期ごとの開示」、「企業への委員会制度の導入」などが挙げられる。 著者は、“進んでいる米国”のエンロン、ワールドコムやIBMなどの会計スキャンダルを冷静に分析する。そして「CEO(最高経営責任者)やその他のトップ経営者が投資家を欺く手法は色々あるが、その目的はいつも一緒だった。投資家は貯蓄と退職金のほとんどを失う。一方で、CEOは巨大な富を築いた」という結論に達する。

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