安倍政権で急加速「原発輸出の意義」を考える

執筆者:新田賢吾2013年6月18日
 トルコのエルドアン首相とは原発建設の政府間合意を結んだ (C)AFP=時事
トルコのエルドアン首相とは原発建設の政府間合意を結んだ (C)AFP=時事

 民主党政権から自民党の安倍晋三政権に変わって半年近くが経った。日本経済の空気はアベノミクスで一変したが、その中でも最も大きく変わったのは原子力発電をめぐる対応だろう。6月5日に政府が発表した「第3の矢」の第3弾には「安全性が確認された原子力発電の活用」という言葉が明記された。2基を除いて停止中の日本の原発のうち、断層問題がなく、大地震・大津波対策が講じられた原発の再稼働がいよいよ動き出す。この動きは国内の電力需給に影響するだけではない。安倍政権の産業政策のなかでも重要なキーワードとなっている「原発輸出」が現実のビジネスとして官民一体で動き出すことも意味しているからだ。

 

安倍セールスの効果

「原発のセールスマン」――。積極的な外遊が目立つ安倍首相が訪問先で、必ず口にしているのが「安全で、経済性の高い日本の原発を導入してください」というフレーズだ。かつて1960年代に時の池田勇人首相が外遊先の欧州でまだ国際競争力の十分でなかった日本の工業製品を盛んにPRし、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領から「トランジスタのセールスマン」と揶揄されたことがあったが、それ以来といえるほど熱心な売り込みだ。パナソニック、ソニー、シャープなどかつて世界を制覇した日本のエレクトロニクス産業が弱体化したのをはじめ、多くの産業で日本の競争力低下が目立つなかで、原発は日本が世界トップを維持している製品だからだ。

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