インドに新幹線は走るのか
2013年6月19日
日印両国政府は5月末、インドが計画している「新幹線」のうち、商都ムンバイと西部グジャラート州の中心都市アーメダバードを結ぶ約500キロの区間について、共同調査を開始することで合意した。日本にとっては世界に冠たる新幹線技術をインドに輸出する大きなチャンスだし、車両や信号システム等のビジネスにも期待が高まる。交通インフラ、とりわけ都市間の高速交通がぜい弱なインドにも大きなメリットがある。
日本のメディアはしばしば、新興国における数千億ドル規模の「インフラ整備構想」を大きく報じるが、「いったいどうやってそのカネを調達するのか」「土地収用はどうするのか」という情報が不明確である場合が多い。
こうしたこともあり、果たして現時点でインドに新幹線は必要なのか、ということも真剣に考えなくてはならない。インドにおける「新幹線」は過去にも政権交代のたびに、あるいは政権テコ入れの材料としてしばしば取り上げられたことがあるいわば政治案件という色彩が強い。
「明確な国土軸」の不在
約50年も前に日本の東海道新幹線が成功を収めたのは、東京=静岡=名古屋=京都=大阪という明確な国土軸が存在し、なおかつその間に相当な人口集積があったからだ。インドも人口密度に関しては日本とほぼ同じだが、いまだに人口の68%が農村部に暮らしている。デリー首都圏とアーメダバードの間には大部分、砂漠などの人口閑散地帯が広がる。
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