「世界を動かすオイル情報」の発信現場

執筆者:畑中美樹2005年3月号

舞台ウラから漏れるわずかな情報を全員が注視しているエネルギーの世界。ただし、その情報を生かせる者も、わずかしかいない。 一九八〇年代の後半、ウィーンのマリオット・ホテル――。プロレスラーと見まがう屈強な大男が警護する一室から、眼鏡をかけた愛想の良い二人の男が出てきた。会員制週刊誌『ミドル・イースト・エコノミック・サーベイ(MEES)』のイアン・セイモア編集長(当時)とワリッド・カッドゥーリ副編集長(同)である。 二人が訪れていたのは湾岸某国の石油相の部屋だ。OPEC(石油輸出国機構)総会に臨む某国の方針や各国の主張、そして誰もが一番知りたい総会の“落とし所”などを聞いていたに違いない。同じホテルのロビー・フロアでは、世界中から集まったジャーナリストや石油業界関係者が情報交換に精を出していた。 例えば新聞などを見ると、世界の石油生産量に関する記事を容易に見つけられるだろう。しかし外貨収入の大半を石油輸出に頼っている産油国にとって、本来、石油関連情報は誰にも知られたくない国家機密にも等しい。彼らは西側消費国のみならず、他の産油国にも自国の情報を知られたくないと考えている。産油国同士とはいっても、所詮はオイル・マーケットという「ひとつのパイ」を奪い合うライバルなのだ。

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