「正直言って注意すべきことが多すぎて、何をどうしたらよいのか分からない」――。企業のPR担当者たちを悩ませているのが、中国における広告表現だ。 二〇〇四年末、米ナイキの中国法人のテレビCMが「中国をバカにしている」と批判を浴び、放映停止となった。「ナイキのシューズを履いたバスケットボール選手が、中国の伝統の象徴である道士や龍を打ち負かす」内容だったためだ。 同九月には日本ペイントの中国子会社が制作した広告が非難の的となった。「同社の木用塗料を塗ってツルツルになった四阿の柱から、巻きついた龍が滑り落ちる」という図だ。「木用塗料の最大の目的は表面を滑らかにしトゲの発生を防ぐこと。それを表現したかった」。日本ペイントの広告を制作した上海李奥貝納広告公司(米レオバーネット)はこう説明している。 二〇〇三年末に大問題となったトヨタ「プラド」の雑誌広告は、最大手の盛世長城国際広告公司(英サーチアンドサーチ)が制作したものだった。「国旗や国歌、毛沢東、トウ小平はだめ。龍もだめ。台湾や少数民族問題がからむ言葉や絵も避けたほうがいい」(中国の広告関係者)。中国に進出した世界の広告大手各社は、社内に審査委員会を設け何段階ものチェックを行なっている。外部からも政府関係者などを顧問に迎え万全の態勢を整えているはずだ。

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