対テロ戦争の「終わり」と「新たな始まり」
アフガニスタンで、米軍およびNATO(北大西洋条約機構)諸国有志が主導する多国籍軍からアフガニスタン国家治安部門(Afghan National Security Forces:国軍と警察からなる)に、全土での治安権限が移譲された。それと同時に、米高官はターリバーンとの直接交渉を近く開始することを明かした。そしてターリバーン側も「暴力の放棄」を宣言してこれに歩調を合わせている。
これらの出来事は、2001年の9.11事件を受けてブッシュ政権が開始した「対テロ戦争(war on terror)」がついに終結することを意味する。2期目のオバマ政権は、軍事的な手段を前面に出したブッシュ政権の対テロ戦略の重い荷をようやく肩から下ろそうとしている。しかし米国と国際テロリズムとの闘争そのものが終わるわけではない。新たな現実を認識し、それに適応した新たな対処策を模索している。5月23日のオバマ大統領の国防大学での演説では、国際テロリズムの現状を踏まえた再定義と、新たな対策の方向性が示されている。
カーブルで治安権限移譲のセレモニー
アフガニスタンのカルザイ大統領は6月18日、首都カーブルの国防大学で治安権限移譲の式典を開き、NATOのラスムッセン事務総長らを前に、「歴史的な日だ」と胸を張った。2011年7月以来、米国・イギリス・ドイツなどの各国の分担地域で順次・段階的に治安権限移譲が行なわれてきたが、今回はその締めくくりとなる。NATO軍などからなる国際治安支援部隊(ISAF: International Security Assistance Force)の約10万人が依然アフガニスタン内に残っており、そのうち約6万6000人が米軍だが、今後はアフガニスタン国軍の訓練や後方支援のみ行ない、2014年度中には全面撤退する予定である。これは昨年5月にNATOが示した「2013年半ばに治安権限移譲、2014年末までに完全撤退」という日程表を忠実に履行していることになる。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。