戦地や被災地での支援に必要な力とは

執筆者:大野ゆり子2005年3月号

 先日、ブリュッセルのスーパーのレジで、「スマトラ沖地震救援金受付」というポスターが眼にとまった。ほんの少額だがお釣りを寄付すると、買い物同様に「TSUNAMI募金」と記載されたレシートを渡してくれる。仏系スーパー「カルフール」では、こうした募金の合計を算出し、「先週、いくらの募金を赤十字に寄付しました」とポスターで報告する。募金をしようと思いながら、テレビで流れる赤十字の口座番号を控え損ねた私には、有難いシステムだった。 ベルギーの赤十字がショッピングセンターで「月五ユーロ募金キャンペーン」を行なっていたこともある。個人にとっては、外食のコーヒー二杯を我慢するぐらいの金額で、アフリカの子供たちにワクチンを送れる。毎月、銀行で五ユーロが自動引き落としされ、年末には税金控除のための書類が送られてくる。日本でも航空会社のマイルやクレジットカードのポイントを寄付や支援に利用できるようだが、こうしたやり方は、懐に大きな負担がかからず、即座に、そして継続的に行なえる。郵便局や銀行での振込みは、長蛇の列を見て、明日にしようなどと思いがちだ。 一方、救援を必要としている側では、お金は一刻を争う。個人ではほんの少額と思っても、それが寄せ集まった時に発揮する効果は大きい。以前住んでいたクロアチアで戦争が始まったときも、周辺地域から焼け出されてくる難民の数が日に日に増え、厳しい冬も近づく中で、先立つものはお金ということを実感した。日本のNGO(非政府組織)が常駐スタッフをおくまでの短い間、薬品や衣料を運ぶお手伝いなどをしたが、各団体の機動力は見事で、紛争の原因が民族対立であるこの地域では、何のしがらみもない日本からの援助は、人々に素直に感謝されていた。今でも私が所属している特定非営利活動法人「子供地球基金」では、幼稚園経営者鳥居晴美さんが、対立する民族の子供が一緒に遊べるような場所を、とホームを作った。砲弾を浴びた廃墟だった建物が立派に改装され、今では子供の憩いの場所として地元に愛されている。

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